Last Updated on 2026年1月7日 by けん実おじさん
赤ちゃんの名前まで動員された「お祭り」
総務のけん実おじさんです。
今回の監査対象は、バブル経済の号砲となった歴史的イベント、
1987年の「NTT上場」
です。
当時の熱狂ぶりは、今の「仮想通貨ブーム」や「新NISA」の比ではありません。
普段は定期預金しかしないサラリーマンや主婦が、こぞって証券会社に押し寄せました。
「NTTは国が保証する株だ。絶対に損はしない」 そんな根拠のない神話が日本列島を覆い尽くしていました。
中には、「当選確率を上げるために、生まれたばかりの赤ちゃんの名前まで使って申し込んだ」という家族もいました。
これは投資ではありません。
国を挙げた「宝くじ」であり、「お祭り」でした。
しかし、祭りの後には必ずゴミが残ります。
NTT株に関しては、「30年近く株価が戻らない」という、あまりにも重い十字架(塩漬け株)が庶民に残されました。
今回は、この熱狂と悲劇を監査し、現代のIPO(日本郵政やソフトバンクなど)にも通じる「大型上場株の罠」を解明します。
1987年の狂乱:2ヶ月で年収分の利益
まずは、当時の異常な数字を確認しましょう。
▼【監査データ】NTT株のロケットスタート
- 公募価格: 119万7,000円
- 初値(1987/2/10): 160万円
- 最高値(1987/4/22): 318万円
上場からわずか2ヶ月で、株価は約2.6倍になりました。
運良く当選した人は、1株持っているだけで約200万円の利益を手にしたことになります。
当時の大卒初任給が約15万円、年収が300万円〜400万円程度だったことを考えると、これはとてつもない金額です。
当時の証言: 「家族で2株当たりました。3ヶ月で360万円の利益です……」
働いて稼ぐのが馬鹿らしくなるような「錬金術」。
これが、多くの日本人を投資(投機)の沼へと引きずり込みました。
「株はチョロい」「NTTは最強だ」 この成功体験が、その後の悲劇の伏線となります。
悲劇の始まり:そして「30年」の塩漬けへ
最高値318万円をつけた後、何が起きたか?
バブル崩壊とともに、株価は坂を転げ落ちるように暴落しました。
▼【監査報告】「売らなかった」人々の末路
多くの投資家は、318万円の時にも売りませんでした。
「もっと上がるはずだ」「400万円に行く」と信じていたからです(強欲)。
そして株価が下がり始めても、「また戻るはずだ」「国策銘柄だから大丈夫だ」と自分に言い聞かせました(正常性バイアス)。
結果、株価は数分の一になり、公募価格すら割り込みました。
次に株価が公募価格(分割調整後)を回復するのは、なんと2010年代に入ってからです。
「高値で掴んで、30年間塩漬け」 これが、夢の国策銘柄のリアルな結末でした。
親が買ったNTT株が、遺品整理で出てきて紙屑同然になっていた、という話は枚挙にいとまがありません。
現代への教訓:日本郵政、ソフトバンクの系譜
「昔の話でしょ?」と笑ってはいけません。
この「国策・大型上場の罠」は、形を変えて現代でも繰り返されています。
① 日本郵政(2015年上場)
「親方日の丸」の郵政グループ上場。
多くの高齢者が郵便局の窓口で勧められて買いました。
しかし、その後の株価はどうなったか?
かんぽ生命の不祥事などで低迷し、一時は公募価格を大きく割り込みました。
「安心」だと思って買った株が、ストレスの源になったのです。
② ソフトバンク(2018年上場)
「配当利回り5%」を売りに、テレビCMをバンバン流して上場しました。
結果は、まさかの「公募割れ」スタート。
初値で売ろうとした投資家はいきなり損失を抱えました。
「知名度がある=儲かる」わけではないという、残酷な授業料でした。
▼【総務部の分析】なぜ大型IPOは危険なのか?
政府や親会社が売り出す大型株には、構造的な利益相反があります。
- 売り手(国・親会社): できるだけ「高く」売りたい。
- 買い手(あなた): できるだけ「安く」買いたい。
テレビCMや証券会社の営業マンが熱心に勧めてくるということは、それだけ「売りたい(高値で売り抜けたい)」という意思の表れです。
カモにされているのは、いつだって「イメージ」で投資する素人なのです。
総括:IPOは「宝くじ」、資産形成は「地味な道」
IPO(新規公開株)は、当たればデカいですが、それは「投資」というより「イベント」です。
祭りに参加するのは楽しいですが、全財産を祭りに賭けてはいけません。
【総務部からの是正勧告】
- 「国策に売りなし」を過信するな。 国策だろうが何だろうが、高すぎる株はいつか下がります。NTTの30年はその証明です。
- IPOは「初値売り」が鉄則。 もし運良くIPOに当選したら、上場日の朝に売ってしまうのが、素人が火傷しないための唯一のルールです。「まだ上がるかも」というスケベ心を出した瞬間、あなたは塩漬け予備軍になります。
- 資産形成は「退屈」なものだ。 NTTのような派手な一発逆転劇はありませんが、S&P500やオルカンへの積立投資こそが、歴史的に証明された王道です。30年間塩漬けにするくらいなら、30年間積み立てていれば、資産は何倍にもなっていたはずです。
「話題になっているから買う」 その行動パターンから卒業しない限り、あなたの資産はいつまでたっても「養分」のままです。
熱狂から一歩引いて、冷めた目でお金を管理する。
それが総務のおじさんの流儀です。


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