【総務部監査報告】なぜ社長は高級車を経費で買うのか?中小企業が挑む「可処分所得」最大化のグレーな戦い

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【基礎・制度】総務の教科書

Last Updated on 2026年1月7日 by けん実おじさん

社長の財布と会社の金庫は繋がっている?

総務のけん実おじさんです。

前回の報告で「中小企業は利益を隠したがる(赤字にしたがる)」というお話をしましたが、今回はそのさらに奥にある「社長の懐事情(可処分所得)」について監査します。

あなたは不思議に思ったことはありませんか?

  • 「なんで中小企業の社長は、会社の経費でベンツを買うのか?」
  • 「なんで毎晩のように飲み歩いて、それを領収書で落とそうとするのか?」

単なる見栄っ張りや遊び人に見えるかもしれませんが、実はその裏には、日本の税制に対する切実な対抗策(ロジック)が存在します。

今回は、会社のお金と自分のお金がごちゃ混ぜになりがちな中小企業特有の「お財布事情」と、税務署とのギリギリの攻防戦について報告します。


逃げ場のないジレンマ:「会社に残す」か「給料で払う」か

まず、社長が直面する残酷な現実を共有しましょう。

会社で100万円の利益が出たとします。

このお金をどうするのが正解でしょうか?

① 会社に「利益」として残す

法人税等が課税されます。

  • 税率: 実効税率で約30%〜40%。
  • 結果: 100万円のうち、30万〜40万円が税金として消え、会社に残るのは60万〜70万円です。

② 社長に「役員報酬」として支払う

個人の所得税・住民税・社会保険料がかかります。

日本は累進課税ですので、ある程度の高収入になると負担は激増します。

  • 税率: 所得税+住民税+社保で最大約50%以上(最高税率の場合)。
  • 結果: 100万円のうち、約50万円が税金・社保で消え、手元に残るのは50万円です。

結論:どっちに転んでも、国にガッポリ持っていかれる。

オーナー社長にとって、「会社のお金」も「自分のお金」も、実質的には「俺の金」です。

なのに、右(会社)に置いても左(個人)に移しても、半分近く目減りしてしまう。

これが、中小企業社長を「経費の鬼」へと駆り立てる根本的な動機です。


第3の選択肢:「経費」で使って満足度を高める

ここで社長たちは考えます。

「税金で取られるくらいなら、自分のために使っちゃった方が得じゃね?」

これが「経費(損金)による可処分所得の最大化」戦略です。

▼【監査分析】「満足」を経費で買う

現金として手元に残そうとするから税金がかかるのです。

ならば、「自分が必要なモノ・サービス」を会社のお金で買ってしまえばいい。

  • 移動手段: 個人で車を買うのではなく、社用車として高級車を買う。
  • 食事: 個人の財布で食べるのではなく、接待交際費として高級店で食べる。
  • 住居: 自宅の一部を「事務所」として家賃を経費にする。

こうすれば、税金がかかる前の「100万円」をフルに活用して、自分の生活満足度を上げることができます。

これが、社長たちが経費を使いたがる本当の理由です。


税務署との攻防:「それ、本当に仕事ですか?」

しかし、何でもかんでも経費にできるわけではありません。

ここからが、社長(&税理士)と税務署との、仁義なきグレーゾーンの戦いです。

争点:「事業関連性」の解釈

税金のルールはシンプルです。

「会社の売上を上げるために必要な費用(損金)ならOK。個人的な楽しみならNG」

しかし、この線引きは非常に曖昧です。

【ケース①:社用車】

  • 税務署: 「送迎なら軽自動車で十分でしょ? なんで1000万円の高級車が必要なの?」
  • 社長: 「いやいや、大切なお客様を乗せるんだから、安全性と乗り心地の良い高級車は『必要経費』だ!」 (本音:俺が週末ゴルフに行くときにベンツに乗りたいだけ)

【ケース②:接待交際費】

  • 税務署: 「この銀座のクラブの領収書、本当に商談ですか?」
  • 社長: 「重要な取引先との関係構築だ! 高級店じゃないと失礼にあたる!」 (本音:俺が綺麗なお姉さんと飲みたいだけ)

大企業では交際費の損金算入に厳しい制限がありますが、中小企業には「年間800万円まで」という特例枠(定額控除限度額)があります。

この枠を使い切るまで、社長たちは「これは仕事だ」と言い張って、夜の街に消えていくのです。


監査総括:ギリギリを攻める「経営者の性(さが)」

この行為を「ズルい」と感じる人もいるでしょう。

しかし、彼らは法律を犯しているわけではありません(脱税は犯罪ですが、節税は権利です)。

ルールの範囲内(あるいは解釈の余地があるグレーゾーン)で、いかに手元に価値を残すか。

それは、税金というコストに対する、経営者なりの防衛本能なのです。

【総務部からの提言】

  1. 「経費」の感覚を持て。 サラリーマンでも、副業を始めればこの「経費」の世界に足を踏み入れられます。自分の財布を守るための強力な武器になります。
  2. 「公私混同」のリスクを知れ。 やりすぎれば税務調査で否認され、追徴課税(罰金)を食らいます。「どこまでがセーフか」という相場観を養うことが重要です。
  3. ニュースの裏側を読め。 「芸能人が脱税で摘発」というニュースを見たら、「ああ、この人は個人的な買い物を経費にしすぎて、言い訳(ロジック)が破綻したんだな」と読み解いてください。

大企業のような「見栄」ではなく、中小企業にあるのは泥臭い「実利」の追求。

この裏事情を知れば、街を走る社用車のベンツも、少し違って見えてくるはずです。

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