Last Updated on 2026年1月7日 by けん実おじさん
国家を喰らう「怪物」の誕生
総務のけん実おじさんです。
今回の監査対象は、金融史において最も恐ろしい事件の一つ、
1992年の「ポンド危機(ブラック・ウェンズデー)」
です。
あなたは「国(政府)」と「個人(投資家)」が戦ったら、どちらが勝つと思いますか?
普通は国家権力を持つ政府です。
しかし、この事件では違いました。
一人の天才投資家率いるヘッジファンドが、大英帝国の通貨ポンドを売り浴びせ、イングランド銀行(英国中央銀行)を完膚なきまでに叩き潰したのです。
その男の名は、ジョージ・ソロス。
彼はこのたった数日の戦いで、10億ドル(当時のレートで約1200億円以上)の利益を叩き出しました。
私がこの事件を監査する理由は、ソロスの武勇伝を語るためではありません。
「機関投資家という怪物が、どれほど圧倒的な力を持っているか」をあなたに理解してもらうためです。
彼らは高度な数学、無限に近い資金、そして冷徹な規律を持つプロ中のプロです。
そんな怪物たちが支配する海(市場)に、スマホ片手の個人投資家が「FXで小遣い稼ぎ」と安易に飛び込むことが、いかに無謀な自殺行為であるか。
歴史の事実をもって証明します。
英国の悲劇:見抜かれた「見栄」と「矛盾」
事件の舞台は1990年代初頭のヨーロッパ。
当時、イギリスは自国の通貨ポンドを、最強通貨であるドイツ・マルクに連動させる仕組み(ERM)に参加していました。
しかし、ここには致命的な「歪み」がありました。
▼【監査ポイント】英国が抱えていた「無理ゲー」
- 英国は不況だった: 住宅バブルが弾け、失業者が溢れていた。本来なら金利を下げて景気を良くしたい。
- ドイツは好景気だった: 統一バブルでインフレ気味。金利を上げて引き締めたい。
- ルールの罠: ドイツ・マルクと連動させるためには、不況の英国もドイツに合わせて金利を上げざるを得ない。
「不況なのに高金利」。
これは経済への拷問です。
英国政府は「強いポンド」という見栄のために、国民生活を犠牲にして無理をしていました。
ソロスの眼:「これは壊れる」
この矛盾を、ソロスと彼の右腕スタンレー・ドラッケンミラーは見逃しませんでした。
「英国はいずれ限界を迎える。ポンドは紙くずになるまで売られるべきだ」
ソロスはドラッケンミラーにこう命じました。
「確信があるなら、急所を突け(Go for the jugular)。もっと大きく賭けるんだ」
彼らは手持ちの資金だけでなく、借金(レバレッジ)をしてまで資金を積み上げ、総額100億ドル規模の「ポンド売り」ポジションを構築しました。
これは当時のイングランド銀行の外貨準備高に匹敵する、国家予算レベルの売り注文です。
暗黒の水曜日:イングランド銀行が死んだ日
1992年9月16日、水曜日。
ソロス率いるヘッジファンド連合軍は、一斉にポンドを売り浴びせました。
▼【ドキュメント】英国政府の断末魔
- AM 8:30 イングランド銀行が必死の買い支え(介入)を開始。しかし、ソロスの売り圧力に全く歯が立たない。
- AM 10:30 英国政府、起死回生の策として「政策金利を10%から12%に上げる」と発表。
- 通常、利上げは通貨高を招く劇薬です。しかし市場は「不況の英国にそんな高金利は維持できない」と見透かし、逆に売り加速。
- PM 2:15 財務相が「金利を15%にする」と絶叫。
- 先進国で1日2回の利上げ、しかも15%。これは政府がパニックになっている証拠でした。ソロスは「勝利」を確信し、さらに売りました。
- PM 7:00英国政府、敗北宣言。
- ERMからの離脱を発表。ポンドは暴落し、変動相場制へ移行。
たった一日で、大英帝国の金融政策は崩壊しました。
ソロスは勝ち、英国民は資産価値の暴落というツケを払わされました。
これが「市場は正義ではなく、力(資金と論理)で動く」という残酷な現実です。
現代の監査:あなたは「怪物」に勝てるか?
さて、ここからが本題です。
この「怪物(機関投資家)」は、今も市場にいます。
しかも、1992年当時より遥かに進化し、凶暴化しています。
【怪物】vs【個人】 戦力比較監査
| 比較項目 | 機関投資家(ヘッジファンド・AI) | 個人投資家(あなた) | 勝敗予測 |
| 情報速度 | 光速(マイクロ秒単位でAIが判断) | 遅報(ニュースになってから知る) | 惨敗 |
| 資金力 | 無限(数兆円規模で相場を動かせる) | 有限(相場の養分になるのみ) | 惨敗 |
| 情報量 | 全知(衛星写真からクレカ履歴まで解析) | 無知(Xや掲示板の噂レベル) | 惨敗 |
| 心理 | 機械(AIによる自動損切り) | 人間(損切りできずお祈りする) | 惨敗 |
FX短期売買の正体
あなたがFXや株のデイトレードをするということは、ソロスのような怪物がウヨウヨいるリングに、丸腰で上がり込むことと同じです。
彼らは「ストップ狩り」といって、個人投資家が「この辺で損切りするだろう」というポイントをAIで予測し、意図的に価格を操作してあなたをロスカットさせてから、利益をさらっていきます。
これは陰謀論ではなく、市場の構造的な事実です。
短期売買は「ゼロサムゲーム(誰かの損は誰かの得)」です。
プロが勝ち続ける裏で、必ずアマチュアが負け続けているのです。
総括:怪物と戦わずに勝つ「唯一の方法」
イングランド銀行ですら勝てなかった相手に、私たちが勝てるわけがありません。
では、どうすればいいのか?
答えはシンプルです。
「彼らがいない土俵」で戦うことです。
個人投資家が持つ唯一の武器:「時間」
ヘッジファンドには弱点があります。
それは「短期間で結果を出さなければクビになる」ことです。
彼らは10年も待てません。
しかし、私たちには「時間」があります。
- 短期売買(FX・デイトレ)はやめる。 そこは怪物の餌場です。
- 長期投資に徹する。 世界経済の成長に賭ける「S&P500」や「オルカン」への積立投資なら、怪物たちの短期的な暴れ回り(ノイズ)を無視できます。
- レバレッジをかけない。 借金をしなければ、強制退場させられることはありません。
ソロスのような天才になろうとしないでください。
彼らが市場を荒らし回る嵐を、頑丈な家(長期分散投資)の中でやり過ごす。
それこそが、現代の個人投資家が生き残るための、最も賢明な「生存戦略」です。


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