Last Updated on 2026年1月7日 by けん実おじさん
「大手なら安心」が死んだ日
総務のけん実おじさんです。
今回の監査対象は、日本経済史に残る最大の悲劇、1997年の
「山一證券破綻」
です。
当時、「四大証券」の一角として君臨していた山一證券が潰れるなど、誰も想像していませんでした。
しかし、現実は残酷でした。
社長がテレビカメラの前で「社員は悪くありません!」と号泣し、2,600億円もの隠し債務が明るみに出たあの日。
日本人が信じていた「護送船団方式(国が守ってくれる)」と「大企業神話」は、音を立てて崩れ去りました。
あれから四半世紀。
私たちはこの教訓を活かせているでしょうか?
「メガバンクだから大丈夫」「大手証券だから安心」 そう思っているなら、あなたは第二の山一ショックで資産を失う予備軍です。
今回は、涙の会見の裏にあった「組織の腐敗」と、自分の資産を守るための「分別管理・ペイオフ対策」について徹底監査します。
破綻の真相:「飛ばし」という名の粉飾決算
なぜ、名門・山一は潰れたのか?
原因は、バブル崩壊で顧客が抱えた損失を、会社が肩代わりして隠蔽する「飛ばし」という不正会計でした。
▼【監査手口】損失のキャッチボール
- 含み損を抱えた株を、決算前に別会社(ダミー会社)に高値で売る。
- 帳簿上、損失は消える。
- 次の決算が来たら、また別の会社に転売する。
これを繰り返すうちに、雪だるま式に膨れ上がった「簿外債務」は2,600億円。
もはや自力では返済不可能な金額になっていました。
野澤社長の涙の理由
破綻会見で号泣した野澤正平社長は、実は就任してたった数ヶ月でした。
彼は営業畑出身で、経理財務の一部が行っていたこの不正を知らされていませんでした。
「私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから!」
この言葉は、一部の経営陣の暴走によって、何も知らぬ7,500人の社員が路頭に迷うことへの、無念の叫びだったのです。
あなたの資産は守られたか?「分別管理」の功績
ここで重要な監査ポイントがあります。
山一證券は潰れましたが、
顧客が預けていた株やお金はどうなったでしょうか?
結論から言うと、全額戻ってきました。
これは山一證券が最後の良心として、「分別管理」を徹底していたからです。
▼【重要用語】分別管理とは?
証券会社は法律で、「会社のお金(自社資産)」と「お客さんのお金(顧客資産)」を、財布を分けて管理することが義務付けられています。
- 株式: ほふり(証券保管振替機構)で管理。
- 現金: 信託銀行に信託。
たとえ証券会社が借金まみれで倒産しても、債権者が顧客の資産を差し押さえることはできません。
山一證券の事例は、「証券会社が潰れても、株はなくならない」ということを証明した、皮肉にも貴重なケーススタディとなりました。
銀行は違う:「ペイオフ」という時限爆弾
「証券会社が大丈夫なら、銀行も大丈夫でしょ?」 そう思った方、それは危険な誤解です。
山一と同じ1997年11月に破綻した北海道拓殖銀行のケースを見てみましょう。
銀行預金は、法律上は「銀行への貸付金」です。
銀行が潰れれば、貸したお金は返ってこないのが原則です。
▼【監査警告】ペイオフ解禁後の世界
当時は特例で全額保護されましたが、現在は「ペイオフ」が解禁されています。
銀行が破綻した場合、戻ってくるのは:
- 元本1,000万円 + その利息 まで。
それを超える分(1,000万円超)は、銀行の残った財産状況に応じてカットされます。
つまり、一つの銀行に1,000万円以上預けている人は、その超過分について「銀行と心中するリスク」を負っているのです。
総括:会社を信じるな、仕組みを信じろ
山一ショックが私たちに残した教訓は明確です。
「会社の看板(ブランド)を信じてはいけない」ということです。
どんなに立派なビルの大手企業でも、中身が腐っていれば一夜にして崩壊します。
野澤社長の涙は、「会社に人生を預けるな」という警告でもありました。
【総務部からの資産防衛マニュアル】
- 銀行預金は「1行1,000万円」まで。 退職金や相続で大金が入ったら、面倒でも複数の銀行に分けなさい。それが唯一のペイオフ対策です。
- 1,000万円超は「証券口座」へ。 証券会社の資産は分別管理されています。銀行預金より、証券口座で持つ「個人向け国債」の方が、制度上の安全性は高いと言えます。
- 「絶対潰れない」は幻想。 メガバンクも、大手証券も、例外ではありません。自分の身は自分で守る。それが自己責任時代のルールです。
涙を流して謝ってくれる社長はいません。
あなたの資産を守れるのは、あなた自身の「分散管理」という行動だけなのです。


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