Last Updated on 2026年1月7日 by けん実おじさん
愛と欲のデジタル搾取
総務のけん実おじさんです。
今回の監査対象は、今、日本中で猛威を振るっている
「国際ロマンス詐欺」および「SNS型投資詐欺」
です。
「ネットで知り合った外国人に騙されるなんて、リテラシーの低い人だけでしょ?」
もしあなたがそう思っているなら、今すぐその認識を改めてください。
あなたはすでに、彼らの射程圏内にいます。
警察庁の最新統計によれば、2025年の被害総額は約1,550億円。
これはもはや個人のトラブルというレベルではありません。
一部上場企業の年間売上高に匹敵する、巨大な「犯罪産業」がそこに完成しているのです。
【監査警告】カモにされているのは「おじさん」だ
ロマンス詐欺と聞くと、「孤独な女性が狙われる」というイメージを持つ人が多いですが、データは残酷な真実を突きつけています。
被害者の約6割は男性であり、その中心は40代〜50代です。
なぜか?
彼らは、ある程度の貯蓄(資産)を持ちながら、老後資金への不安や、漠然とした孤独感を抱えているからです。
「資産を増やしたい」という欲と、「誰かに認められたい」という愛への渇望。
この2つの心の隙間を、詐欺組織はAIと心理学を駆使して的確に狙撃してきます。
結論を申し上げます。
画面越しにあなたに愛を囁くその美女(またはイケメン)は、運命のパートナーではありません。
あなたを「豚」として育て、太らせ、最後に全財産を奪って屠殺(とさつ)するための、冷徹な飼育員なのです。
手口の解剖①:殺猪盤(ピッグ・ブッチャリング)
この詐欺の手口は、中国語圏の犯罪組織で開発され、世界中に輸出されました。
その名は「殺猪盤(Sha Zhu Pan)」。
英語圏では「Pig Butchering Scam(豚の屠殺詐欺)」と呼ばれています。
被害者を「豚」に見立て、時間をかけて太らせてから食らう。
その残虐なプロセスを監査します。
フェーズ1:育成(Fattening)〜投資の話はしない〜
詐欺師は、決して最初から「金を出せ」とは言いません。
焦って金を要求するのは、三流の詐欺師です。
一流の「飼育員」は、まず豚(あなた)を太らせることに全力を注ぎます。
- 毎日のルーティン化: 「おはよう」「ランチは何を食べた?」「おやすみ」 マメな連絡を数週間〜数ヶ月続け、あなたの生活の一部に入り込みます。
- ミラーリング: 「私も映画が好きなの!」「僕も辛いものが好きだよ」 あなたの趣味や価値観に徹底的に合わせ、「こんなに話が合う人は初めてだ」と錯覚させます。
- 将来の共有: 「いつか日本に行きたい」「二人で穏やかな老後を過ごしたい」 恋愛感情を植え付け、二人の未来予想図を描かせます。
この期間、あなたは「愛されている」と感じるでしょう。
しかし、彼らにとってそれは、豚に極上の餌を与えている作業に過ぎません。
フェーズ2:屠殺(Slaughter)〜成功体験という猛毒〜
信頼関係(餌付け)が完了すると、いよいよ屠殺の準備が始まります。
きっかけは自然です。
「二人の将来のために、資産を増やさない? 私が叔父から教わった確実な方法があるの」
ここで多くの人は警戒しますが、詐欺師は「最強の武器」を使ってきます。
それは、「実際に儲けさせ、出金させること」です。
- 少額投資: 「まずは10万円だけ試してみて」と誘う。
- 利益発生: 指定されたアプリ(偽物)上で、資産が増える。
- 出金の許可: 「利益分を引き出してみよう」と言い、実際に現金があなたの口座に戻ってくる。
これが致命的な罠です。
「本当に儲かった! お金も戻ってきた! この人は詐欺師じゃない!」 心理学で言う「部分強化」によって、あなたの疑念は完全に消滅し、信仰に近い信頼が生まれます。
そして、あなたは自ら進んで、定期預金を解約し、借金をし、数百万、数千万円を振り込みます。
「もっと太らせよう」という自分の欲が、理性を食い尽くすのです。
全財産が入金された瞬間、アプリは凍結され、愛した人はブロックと共に消え去ります。
これが、現代の屠殺場のリアルです。
手口の解剖②:テクノロジーの悪用
前回の報告では、時間をかけて信頼を築く「殺猪盤(ピッグ・ブッチャリング)」の心理的手口を監査しました。
しかし、現代の詐欺師が使う武器は心理学だけではありません。
最先端の「テクノロジー」が悪用されています。
① ディープフェイク:ビデオ通話の嘘
「怪しいと思ったらビデオ通話をすればいい。詐欺師なら顔を出せないはずだ」 この常識は、もう通用しません。
北海道で起きた警察官なりすまし詐欺では、犯人はAI(ディープフェイク技術)を使って、ビデオ通話の中で「制服を着た警察官」になりすましました。
もちろん、ロマンス詐欺でも同様です。
あなたが画面越しに見ている絶世の美女やイケメンは、AIがリアルタイムで生成した「動くアバター」かもしれません。
「ビデオ通話をしたから本物だ」という思い込みこそが、致命的なセキュリティホールになります。
② SNS型投資詐欺:LINEグループという劇場
もう一つの主流が、「著名人なりすまし」からの集団催眠です。
FacebookやInstagramで、有名実業家や経済評論家の写真を使った「投資の極意」広告を見たことはありませんか?
あれをクリックすると、LINEグループに誘導されます。
そこは、完璧に演出された「劇場」です。
- 先生(カリスマ): 架空の投資指導者。
- アシスタント: 手続きを案内する事務役。
- サクラ(多数): 一般人を装った詐欺グループの一員。
あなたがグループに入ると、サクラたちが次々と叫びます。
「先生のおかげで利益が出ました!」「出金できました、ありがとうございます!」 大量の「成功報告(偽造スクショ)」を見せられると、人間の脳は「バンドワゴン効果(みんなやってるから安心)」に支配されます。
「自分だけやらないと損をする」という焦りに駆られ、正常な判断力を失ったまま、指定された口座に振り込んでしまうのです。
二次被害監査:ハイエナたちの宴
詐欺被害に遭った後、地獄はまだ終わりません。
資産を失い、藁にもすがる思いの被害者を狙う「ハイエナ(二次詐欺)」が待ち構えています。
① 偽の救済者たち
ネットで「詐欺 返金」「ロマンス詐欺 取り戻す」と検索すると、たくさんの弁護士事務所や探偵業者の広告が出てきます。
しかし、その中には「着手金詐欺」を行う悪徳業者が紛れ込んでいます。
- 手口: 「私たちのノウハウなら返金可能です」と甘い言葉で契約させ、数十万円の着手金を振り込ませる。
- 実態: 何もしない。あるいは、形だけの通知書を送って終わり。「相手と連絡が取れませんでした」と言い訳して、着手金は返さない。
特に探偵業者や「NPO法人」を名乗る団体には注意が必要です。
法的に返金交渉ができるのは弁護士(および認定司法書士)だけです。
「必ず取り戻せる」と断言する業者は、100%詐欺(または誇大広告)だと断定して構いません。
詐欺師に騙されたカモを、別の詐欺師が骨までしゃぶり尽くす。
これが二次被害の残酷な現実です。
対策と提言:ゼロトラスト(誰も信じるな)
愛や夢を語る相手を疑うのは心苦しいかもしれません。
しかし、あなたの大切な資産と未来を守るためには、「ゼロトラスト(何も信頼しない)」の姿勢が不可欠です。
対策①:Googleレンズで「顔」を検索せよ
相手から送られてきた写真(顔写真、食事、風景)を、Googleレンズなどの画像検索にかけてください。
多くの場合、中国や韓国のインフルエンサー、あるいは全く無関係な個人のSNSから盗用された画像であることが判明します。
「私の写真はネットにはない」と言われても、信じてはいけません。
対策②:金融庁リストと照合せよ
「投資」の話が出たら、その業者が金融庁に登録されているか確認してください。
金融庁のウェブサイトには「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」があります。
ここに名前がなければ、それは違法業者(=詐欺)です。
「海外の特別枠だから」「これから登録するから」という言い訳は、すべて嘘です。
総括:ネットでの出会いに「絶対」はない
最後に、総務部からの鉄の掟をお伝えします。
「会ったことのない相手に、1円たりとも送金するな」
どれだけ愛を語ろうが、どれだけビデオ通話で顔を見ようが、物理的に会って、身元を確認できていない相手にお金を渡す理由は一つもありません。
ロマンス詐欺は、あなたの「心の隙間」に入り込むウイルスです。
セキュリティソフトは、あなたの「理性」しかありません。
もし被害に遭ってしまったら、恥ずかしがらずに警察(#9110)に相談してください。
自分を責める必要はありません。
あなたは、プロの犯罪組織による高度な心理攻撃の被害者なのですから。


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